2007年03月10日

東京行 3

 カプセルでさっさと寝る――
――夜中に空腹で目覚める。晩飯、イカとタケノコと酒だけだからなぁ。体はだいぶんマシな感じ。
 食べに、外に出る。

 新宿の深夜である。
 閉まっている店もあるが、和歌山の夜などと比較にならないほど明るく、開いている店も多い。そして、呼び込みが鬱陶しい……こちらはなにか旨いものはないかなとキョロキョロしているものだから、カモに見えるのだろう。なかでも路地路地に立っている、外国のお姉さん……こちらが無視しても追いすがってくるうえに、オネガイシマスオネガイシマスと懇願される……こちらが悪いことしてるみたいな気分……
 開いている店は多いものの(とくにマクドはそこらじゅうにあって、しかもどこも盛況である)、ラーメン、カレー、ファストフードと脂っこいか量のあるものばかり……こちらはさっきまで風邪で頭がくらくらしていたので、なにか優しいものが……感じのいいこじんまりとした中華屋で朝がゆでもと考えていたが、アテもなしに歩き回ったって、そんな希少な店はみつからない。あんまり歩き回っても、ホテルの場所がわからなくなるし、せっかくましになった風邪がぶりかえしてもつまらないので、結局はコンビニのサンドイッチとヨーグルトジュースでごまかしました。
 写真はありません……夜中の新宿歌舞伎町で無造作にシャッターを切ったりしたら、どんなおそろしいものが映って、追われる羽目になり、平凡な日常にさよならしてしまうかもしれませんもの。

 朝――チェックアウト時間ぎりぎりまで粘って体を静養し、中野へ。
 目的は、青葉。
 一時期はラーメンランキング一位の常連で、一時代を風靡した名店です……とはいえ、店主が拉致監禁の被害にあったあとから味が落ちたともっぱらの評判ですけど……

 中野の町はなんか好き……駅前から商店街が延び、ちかくに文化施設もあり(中野サンプラザ)、路地に入ると、居酒屋や割烹や韓国料理店やいろんな店があり、おいしそうなコロッケ屋が油の香りを漂わせ……歩きだけですべてが揃う、こじんまりとしてしかも賑やかな感じで。
 路地の飲食店街に青葉はありました。

 青葉

 店内は和風だしのいい香りが……

 特製つけめん(900円)

 つけめん、というのは生まれて初めて。ラーメンというのはどんぶり一杯の芸術、スープと麺のコラボに具で彩りを添えろ、みたいな印象が強くて、あまり食指が動かなかったんです。でもまあ、わざわざここまで来たんですし……

 つけだれ

 おお、具だくさん。

 チ……麺が多いな。特製というのは具がたっぷり入ってますよ、という意味だと思ったんだけど、どうやら大盛りということらしい。事前調査が不足だった。

 食べてみる。麺が冷たいとは思っていたが、つけだれのほうも冷たいとは思わなかった……ちょっと驚く。そして味わう………………………………おいしくなーい!
 カツオ昆布の出汁ばかりが突出して、それだけしか味わいがない。他の旨みが感じられないのでは冷たいせいもあると思いますが、麺で少しの油で調味された和風出汁を啜っている感じ。煮卵もチャーシューもなんだか……メンマは肉厚でこればかりは特別な感じを得ましたが……
……おいしくない……
 がっかりだ……
 麺を少し残しました……

 その後は上野へ出る。
 アメ横を冷やかして(食べ物を見ているだけで幸せなぼくです)、その後、東京国立博物館へ。日本のナショナルミュージアムですから、一度は見ておかないと。
 しかし上野公園は広い。上野動物園、国立科学博物館、国立近代美術館、不忍池と、たくさんの施設を擁する公園はメチャメチャ広い。博物館にいくまでに相当歩きました……
 そしてこの暖冬、陽光燦々、暖かいはずなのに、ぼくは寒い。悪寒がする。それなのにしばらくすると暑くてたまらなくなり、上着を脱ぐ……いけませんよ、風邪がぶりかえしてますよ!

 写真はなし。カプセルホテルに自由に使えるコンセントはなく、充電ができないので、カメラの電池がなくなるかもしれなかったから。以降は厳密に食べ物の写真に限るということで。

 国立東京博物館のほうは、ナショナルミュージアムとしては想像通りショボい収蔵品。ヨーロッパ諸国やアメリカなどとは歴史的ななりたちが違いますから、比べるのは酷なんですけど……ただね、ときおり黒電話を見るんですよ、現役で使っているのかはわかりませんが……予算を貰っていないんだなぁとも感じました。京都の国立博物館では火焔土器に魂を惹かれた記憶がありますが、今回は心を揺さぶる収蔵品はなし……ああ、空海の肉筆を見ました。弘法も筆の誤り、の俚諺のとおり達筆だったようですが、よくわかりませんでした。

 寒い……ホテルのチェックイン時間16時を心待ちにして、カプセルのなかで一時間余り仮眠……これからが遊び8、仕事2の仕事の部分なんですが……
 行かねばならない時間になっても、体はダルい。
 それでも行かねば来た意味がないので、無理に出かける。

 パーティです。この場でいろんな人と話をして、名刺を配って、人脈を広げていくというのが仕事なんですが……寒い! 痛い、頭が痛い!
 もはや人と喋れるような状況ではないので、食い物だけでも、と必死の思いで。しかし、うまくもなければ、食欲もないのでした。
 それでも無理に。

 オードブル


 オードブル

 オードブルの類は、うまくないです……

 ローストビーフ

 これは旨いんです。肉は柔らかいし、添えられているインゲンが旨い。インゲンがですよ。本来の体調ならね……

 オムレツ

 できててアツアツですよ。バターの香りがたまりません。本来の体調なら……

 カレー

 ブイヨンの効いた欧風カレー。これも本来なら旨いんですが……

 ほかにもカニつめフライ、ホタテバター焼き、トマトソースのパスタ、うまいものはあるんですが、もうダメ……倒れるかも……

 ホテルに帰って寝る。

 夜中に空腹で目覚める。
 体調は回復している――では夜の街を歩きましょう。
 今夜の宿は新橋。ニュースでよくサラリーマンがインタビューを受けている町です。賑わいは新宿ほどではありませんが、そこらじゅうで店が、深夜でも開いている。繁華街ではありますので、辻辻にはやはり女性の立つ姿……今回はとうとう袖を掴まれました……

 開いているといってもラーメンとファストフードばかりではあるんですが……
 ここを選びました。

 和歌山にはない、リンガーハット。

 ちゃんぽんと皿うどんのチェーン店ですね。

 ちゃんぽん

 餃子とセットで650円でした。

 チェ……うまくないや。

 起きると、もはや帰るだけ。風邪もだいぶん落ち着いた。
 その前にどこか寄って、食べよう。
 予定では九段下「斑鳩」という現ランキング一位常連店に行こうと思っていたんですが、ちゃんぽんを食べて麺はもういいやという気分だし、青葉の衝撃はまだ記憶に新しいし――たぶん行って食べたら、東京のラーメンに関していい印象を持って帰れるとは思ったんですが、人形町へ。
 目的は親子丼――超有名店玉ひでへ。
 そこで開店30分ぐらいに到着して、行列ゼロ。ああ、こんな感じね、と10分ほど附近をぶらついてきたら、40人の大行列に育っている……
 ああ、痛恨のミス……待たずに食べられたはずなのに、いまさら並ぶ気にもなれず……病み上がりなので体力もなし……
……断念……
 腹は減っているので、近所の中華屋へ。

 人形町、華子。


 日替わりランチ(720円)


 メイン、茄子と豚の甘辛炒め


 つけあわせ 焼売とスープ


 雰囲気からして中国家庭料理という感じ。味もいい。じつにいい。
 いいどころか、今回の旅でいちばんうまいじゃないか。メインの炒め物は歯にさわらないようにしっかりと仕事をした茄子と豚、ソースの甘辛さがよく合う。シューマイも肉の粒が感じられる本格的なもの、スープには一切化学調味料の風味がなく……
 ああ……うまかった……人形町という下町で着実に歴史を重ねた個人店の実力ということでしょう。

 あとは、新幹線に乗って帰ってきました。


 

  


Posted by guntech at 10:35Comments(0)食べたもの